ー猫を捨てた方へー

 あなたが捨てたその命は、物ではありません。その小さな瞳は、あなたを信じていました。
 何年も一緒に過ごした日々も、寄り添った時間も、すべて覚えています。事情があったのかもしれません。でも、捨てることは、苦しみと孤独に突き落とすことです。
 途中で放り出さないでください。
 動物は言葉を話せません。だからこそ、あなたを疑うことも、責めることもできません。ただ、信じ続けるしかないのです。それなのに、あなたは置き去りにしました。今年のこの暑い日中、空腹のまま。あの子は、きっとあなたが迎えに来ると信じていたはずです。お寺の敷地内で、足音が聞こえるたびに、あなただと思って茂みの中から耳を立て、あなたが来たと胸を高鳴らせていたでしょう。
 事情があったのかもしれません。でも、事情は命を軽くしません。
 責任は、口実では消えません。ペットとして「飼う」と決めたその日から、あなたはその命のすべてを背負ったのです。食事も、病気も、老いも、最期の瞬間までも。それが命を預かるということです。
 もしあなたが同じ立場になったらどうでしょうか?信じていた人に、理由も告げられず置き去りにされることを。きびしい暑さと空腹と不安の中で、一日、一日と過ごすことを。
 もう二度と、同じことを繰り返さないでください。
 どうか覚えていてください。捨てられた命の瞳は、最後まであなたを探し続けているということを。

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